PPE for female athletesとは

我が国における女性アスリート・パラアスリートの競技力は年々向上しています。

しかし、ハイレベルなパフォーマンスを求めるあまり、自身の健康を顧みず、ついつい頑張りすぎることで健康を害している傾向もみられています。またコーチング現場においては、女性アスリート・パラアスリートの過去の病歴・障がい歴（メディカルヒストリー）や現在の健康状態の把握が非常に難しく、一体、どこまで練習を課すことが可能なのかはコーチの経験値に委ねられているのが現状です。つまり、女性アスリートの定期的かつ明確な健康評価と、それに基づく指針がないため、健康障害が引き起こされるまで運動をし続けていることが大きな問題といえます。

特に女性アスリートが陥りやすい3つの障害（利用可能エネルギー不足、視床下部性無月経、骨粗鬆症：Female Athlete Triad；FAT）の予防は早期発見が有効であり、病気の徴候がみられたら、できるだけ早く医師の診察を受けることが重要です。

女性スポーツ研究センター（ JCRWS ; Japanese Center for Research on Women in Sport ）は、2019年度・2020年度スポーツ庁委託事業　女性アスリートの育成・支援プロジェクト「女性アスリートの戦略的強化に向けた調査研究」により、「PPE for female athletes」（Pre-participation Physical Evaluation for female athletes ;女性アスリートの運動参加前健康評価）を開発しました。

PPE for female athletesの目標と目的

PPEの目標は、女性アスリート・パラアスリートの健康と安全の維持を支援することです。

PPEは問題のある女性アスリートを運動参加から除外するのではなく、安全な運動参加を促進するためのものです。

このPPE for female athletesは、NCAA（; National Collegiate Athletic Association）で用いられているPPEと、米国ペンシルベニア州立大学のWomen's Health & Exercise Lab（WHEL）の研究を参考にしています。私たちに多くの支援を与えてくれたペンシルベニア州立大学のMary Jane De Souza, Ph.D.とNancy I. Williams, Sc.D.に心から感謝申し上げます。

私たちは日本人女性アスリートの客観的データを収集・解析し、婦人科、整形外科、メンタルのドクターおよび公認スポーツ栄養士による監修の下、この「女性アスリートの健康を守るシステム」を構築しました。

もし健康状態に問題がある可能性（High risk）があった場合には、運動参加前に、必ず医師の診断を受けるようにしてください。

PPEはそれぞれの「シーズン前」に必ず実施してください。

理想的には、シーズン前の練習の少なくとも6週間前に実施し、検出された健康問題の修正またはリハビリのための時間を確保する必要があります。さらに、「シーズンの終了時」にもPPEを実施することで、オフシーズンに、適切な身体のメンテナンスを行うことができます。

女性アスリートの皆さんは、PPE for female athletesを活用して怪我や病気を予防し、健康な身体で運動に参加してください。健康な状態で運動参加することは、長期的に高い競技力を発揮することにつながります。
さらに、アスリートをサポートする指導者やサポートスタッフにとっても、結果として、国際的に活躍できる女性アスリート育成を推進することにつながるでしょう。